東京高等裁判所 昭和29年(ネ)1113号 判決
控訴人被控訴人間における右事業引継の経過についてみるに、各証拠を総合すれば被控訴人が昭和二十五年十一月頃から前記小口金融業を開始したところ、昭和二十六年二月中控訴人は当時金融業の利益のあるのをみて、約十万円程度の欠損がある見込ではあつたが、将来事業の回転を計ることにより採算があると考えて、被控訴人に対し右営業の譲渡方を申し入れ、被控訴人との間に右営業の全部を無償で譲渡する契約が成立し、被控訴人は同年三月三日控訴人に対し、何らの対価の支払をも受けることなく帳簿、事務所等の一切を引継ぎ、その際将来被控訴人が経営中加入者との関係について生じた欠損及び将来同加入者に支払うべき掛金利息等の負担については、何らの約定をもなすことなく無条件で控訴人に引継ぎを了したことを認め得るから、当時控訴人被控訴人の間にはその現状のままにおける経営一切の移転が行われ、被控訴人の経営中における掛金等に関連して生ずる債務も、控訴人においてこれが履行を引き受け当時の加入者についてやがて満期が到来し、控訴人においてその掛金及び利息を支払つても、被控訴人に対しこれが弁済を求めない旨の合意が成立したものと認定するを相当とする。
最後に控訴人が被控訴人の事業引継当時の加入者等に対する債務を弁済したことを理由としての法定及び任意の代位権の主張についても、前二段に亘つて認定したとおりの理由により、少くとも控訴人は被控訴人に対して加入者等に対する債務の弁済を理由に、これが支払を求めることはできないものといわなければならないから本件控訴はいずれも理由がないとしてこれを棄却した。